『エリア51 1』

グレイトフルデッド』『ジャバウォッキー』などで知られる、久正人(ひさ・まさと)先生の、『月刊コミック@バンチ』連載中の作品。
その待望の第1巻が、昨日、6月9日に発売となりました。
久正人先生の単行本としては、2010年10月に、『びっくりモンスター大図鑑』という児童書が出ていますが。
コミックとしては、2009年1月発売の『ジャバウォッキー』第7巻以来、実に2年以上ぶりの新刊となります。
なお、この『エリア51』第1巻発売を記念して、来月、7月2日に横浜で、「人生初」というサイン会も開催されます。
それでは、以下、感想です。


(残りの27行、ネタバレあり)

「でもお前 今本当に 幸せなのかい?」

ドラゴン、ヴァンパイア、妖怪、UMA、宇宙人……などなど、世界中の異形をかき集め隔離した場所、“アメリカ51番目の州”「エリア51」。
表の世界にいられなくなったワケありのヒロイン(日本人)は、助手(河童)とともに、そんな危険地帯で探偵業を営んでいるが……!?
といったあらすじのこの『エリア51』第1巻には、『月刊コミック@バンチ』第1号(2011年3月号)から第4号(6月号)に掲載された、計4話が収録されています。
ヒロインが、なくなった壷を追って、街中を巻き込む大立ち回りを見せる、第1話・「WHY ARE YOU GUYS SO QUIET?」。
一度は離ればなれになった兄妹の、涙の(涙にもいろいろありますが……)再会と旅立ちを描く、第2話・「FAREWELL! MR.VAMPIRE!!」。
マレーシアの伝承にまつわる未解決案件と、ヒロインの過去が交錯する、第3話・「YOU CAN'T HOLD SOMEONE WITHOUT A BODY.」。
偶然立ち寄ったそば屋の、立ち退きをめぐるトラブルに首を突っ込んでしまう、第4話・「DO YOU KNOW THE STORY OF THE BLUE BIRD?」。
この第4話は、シリーズ初の連続エピソードで、続く第5話と併せて、一つの(泣ける)お話となっています。
次回(次巻)予告も収録されてるんですが、第2巻発売まで待てない!という方は、現在発売中の『月刊コミック@バンチ』最新号(2011年7月号)をどうぞ。
7月号では『エリア51』が巻頭カラーを飾っていて、見開きカラーページとか、大変に迫力があります。あのワンちゃんたち(笑)は、今後ぜひ、本編中にもご登場を。
それにしても、第4話のそば屋の親父とか、久先生の描くおっさんは、みんないい味出してます。話数が進んで、ヒロインもずいぶん、かわいく見えてきましたが(笑)。
さて、第1巻を通してのストーリーですが、第4話でついに、ヒロインの目的が明らかにされ、そして今後の鍵を握りそうな、重要な相棒が本格的に登場しました。
それまでほのめかされていたことや伏線などを回収して、例えば、第1話のあのネタはここにつながるのかー、といった感じで。
公式サイトの連載作品紹介では、「異形犯罪ピカレスク・ロマン」、この第1巻の帯では、「「エリア51」を舞台にした異形ノワール」とあって。
この「ノワール」というのは、フィルムノワールとか、香港ノワールとか、そういったジャンルのことだと思いますが。
確かに、痛快でニヤリとする部分と、ベタ塗り多めの絵柄とよく合う、ほろ苦い、大人な部分が、混ざりあったような物語になってます。今のところ、全体として。
出来ればやはり、ヒロインには、最後に笑顔でと思う一方で、久先生の描く、切なくビターな結末も見てみたい気がします。
身の上話めいたことは、「ま その話 今でなくてもいいでしょ?」なんてはぐらかされて、まだはっきりとしたことは分からないんですが。
ヒロインはどうやら、ある人物と決着をつけるために、この街で探偵をやっているようで。
この先いったい、どんな展開が待っているのか。次巻以降も楽しみです。
エリア51』第1巻にはこのほか、漫画本編と一緒に本誌掲載中の連作エッセー、『百頭菜単』なども収録。
『百頭菜単』では毎回、横浜中華街にあるという料理店「百頭」の、とんでもない料理を口にされている久先生ですが。
ほんとにお体には、十分、気をつけて。くれぐれも巻末ページに、「作者急病のため……」なんて載らないように(笑)。
あと、『月刊コミック@バンチ』公式サイトでは、現在、久先生のデビュー作、『グレイトフルデッド』の第1話が、期間限定で公開されています。
実は自分は、『グレイトフルデッド』シリーズだけは未読なのです。残念ながら今、「絶版」状態みたいで。
なので新潮社さん、是非この勢いで、新装版『グレイトフルデッド』の刊行を、よろしくお願いいたしますーー。