『流星小説。』

夏コミお疲れ様でしたー(←今頃)というわけで、今回のコミケでゲットした同人誌の中から、サークル・「ラノベ作家休憩所」さんの新刊を。
同人誌ではありますが、サークル名の通り、書き手は全員プロの作家さんで、日日日先生、十文字青先生、田尾典丈先生、森田季節先生、藍上陸先生という豪華な顔ぶれ。
ちなみに、メンバーの変動はあるみたいですが、サークル・「ラノベ作家休憩所」自体は、2010年の夏コミから、毎年参加されてるようです。
それでは以下、小説同人短編集・『流星小説。』の感想です。


(残りの28行、ネタバレあり)

  • 『きゅうくつティラノ』

ささみさん@がんばらない』『狂乱家族日記』などで知られる、日日日(あきら)先生の作品。近刊は、来月、『ビスケット・フランケンシュタイン(完全版)』発売?!
修学旅行の帰り道、なにやらとんでもない事態に巻き込まれてしまった、中学生たちのお話。二人の登場人物の視点から、徐々に状況が明らかになっていきますが……。

助かる可能性は、ほとんどない。まるで、ぼろぼろの吊り橋。でも、それを渡りきらなきゃ前へ進めない。

誰かを抱えながらだと、その重みで落ちてしまうかもしれないけど。ひとりぼっちで生き延びても、ねぇ星石くん――きっと、つまらないでしょう。

  • 『星屑一号』

薔薇のマリア』などで知られる、十文字青(じゅうもんじ・あお)先生の作品。近刊は、先々月発売の新シリーズ・『灰と幻想のグリムガル』など。
ある朝、目が覚めたら、身長が百六十二メートルになっていた、男子高校生のお話。わけも分からぬまま、途方に暮れる彼の前に、高校の同級生が現れますが……。

「わたしは、保科くんをやっつけるために、つくられた! 人型最終決戦兵器、山田星屑! 人型侵略兵器、保科陸雄! 地球を! 全人類を、守るために! わたしがあなたを、倒す……!」

人と人とは、これほど傷つけ合わなければ、分かり合えないものなのか。それとも単に、メインヒロインやサブヒロインとの、修羅場を見せつけられてるだけなのか(笑)。

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』などで知られる、田尾典丈(たお・のりたけ)先生の作品。近刊は、先月発売の『リーディング・ブラッド』第2巻。
幼馴染みだとかツンデレだとかに設定されたヒロインではなく、幼馴染みとかツンデレとかいう属性そのものを擬人化した、ちょっとシュールなお話。
稀少性や不可逆性、現実世界の世相なども反映した、創作世界での流行廃り・栄枯盛衰を乗り越えて、ヒロイン・「眼鏡属性」さんが奮闘します。

「……一度でいいから私はスポットライトを浴びたい。一過性のブームでもいい。みんなに認められたいの。」

  • 『リメンバーズ』

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』などで知られる、森田季節(もりた・きせつ)先生の作品。近刊は、今週発売の新シリーズ・『烈風の魔札使と召喚戦争』など。
人間関係のトラブルがきっかけで死んでしまった、女子高生のお話。
神様に助けられ、宙ぶらりんな存在として生き返った彼女は、自分が存在し続けていく目的を作るため、自分の死と関わりのある同級生を“殺す”ことに決めますが……。
人と人との関わりの中で、気持ち・感情が育つ一方、それがコミュニケーションを複雑にして。たしかに「一見、救いがなさそうだけど、どことなく救いがある話」でした。

  • 『1999年、7の月のバス停。』

アキカン!』などで知られる、藍上陸(らんじょう・りく)先生の作品。近刊は、今年3月発売の、その『アキカン!』第10巻。
とある“仕事”のために、海沿いの寂れたバス停に降り立った、一人の男のお話。
主人公はそんな場所で、具体的に何をしようとしていたのか。縁起でもない話ですが、彼の目的を達成する、現実的で簡単な方法が、少なくとも一つあるように思います。
そしてそう考えると、それまでの冗談のような本当のようなやりとりが、最後の贈り物のように、ちょっぴり切なく、胸に響いてくるのでした。


流星、すなわち流れ星。それが現れてから消えるまでに、願い事を三回唱えることが出来れば、その願いは叶う、なんてことも言いますが。(言いますよね?)
宇宙や地球に比べれば、ほんの一瞬のようなそのきらめきの中で、登場人物たちは果たして、自らの、あるいは誰かの願いを、叶えることが出来るのか――。
本短編集は、コミケ後に、委託販売もされてたようですが、残念ながらすでに完売? 詳しくは、サークル代表・森田季節先生のブログなどをチェックしてみてください。