『パシフィック・リム』

『パンズ・ラビリンス』『ヘルボーイ』などで知られる、ギレルモ・デル・トロ監督の最新作。今月、8月9日より全国公開中。
もともと見に行くつもりで、ちゃんと前売券も買ってあったんですが。コミケへ行ったり、思いがけず初めて歌舞伎を見て来たりで、すっかり遅くなりました。
ともかく以下、『パシフィック・リム』(IMAX 3D・日本語吹替版)の感想です。


(残りの18行、ネタバレあり)
2013年8月、太平洋深海から突如現れた巨大生命体・「KAIJU」と、人型巨大兵器・「イェーガー」を開発し、それに立ち向かう人類の姿を描いたお話。
ちなみに「KAIJU」というのは、もちろん日本語で「怪獣」のことで、「イェーガー」というのは、ドイツ語で「狩人」を意味する巨大ロボットです。
さてまず、評判通り、映像と音響がすごかったです。細部まで作り込まれた巨大な怪獣やロボットが、大音響とともに暴れまくりで、見てて迫力がハンパなかったです。
そんな本作の目玉となる、怪獣とロボットについてですが。先にロボットに関して言うと、この操縦方法がちょっと変わってます。
基本的には、戦闘機の神経操縦システムの応用らしいのですが。パイロットは一人ではなく二人で、お互いの意識をシンクロナイズさせて、ロボットを操縦するのです。
これは、操縦者が一人では、脳への負担が重すぎるからなのですが。シンクロのため相手の「頭の中に入る」、「ドリフト」(“漂う”?)というプロセスを必要とします。
そしてその「ドリフト」の際には、相手の記憶が“走馬灯”のように流れ込み、意識が共有され、パイロット同士の絆が強ければ強いほど、ロボットも強くなるのです。
しかし次第に強大化し、襲来ペースを上げる怪獣に対し、各国首脳部は「イェーガー」計画に見切りをつけ、対怪獣防護壁・「命の壁」を築く計画へとシフトするのでした。
一方、怪獣に関しては、(劇場パンフによると)最初の戦いは8月10日から6日間で終わりますが、「パシフィック・リム」(環太平洋地域)に大きな被害をもたらします。
そのため、怪獣に対抗する兵器の開発とともに、怪獣自体の研究も進められ、怪獣が、この世界を狙う者の命令で送り込まれた、異世界からの尖兵であることが判明します。
そして、「命の壁」など実際には役に立たないことを目の当たりにした主人公たちは、国籍も経歴も異なるパイロットを乗せ、ついに人類の存亡をかけた最後の作戦へ――。
本作のエンドクレジットでは、希代のモンスターメイカーとして知られるレイ・ハリーハウゼン氏と、『ゴジラ』などの本多猪四郎監督に、献辞が捧げられているのですが。
映画本編に出てくる「KAIJU」も、恐竜などの実在の生物と言うよりは、モンスターや、日本人ならまさしく「怪獣」と呼びたくなるような造形で。
日本では“お盆”にあたるこの時期に、太平洋の海の底・遙か彼方の“彼岸”より、どこか見覚えのある不気味なものたちが現代社会に現れる……。
だからこの作品は、まさに『ゴジラ』などのメッセージ性を引き継いだ、かつてその大海原を取り巻く国々の間で行われた戦争の、犠牲者への鎮魂歌ではないのかなと。
そしてそれは、「この映画では主に、人々が団結することの意義を描いているんだ。」という、監督の言葉へと繋がっていくように思うのです。
もちろん、映画の見方は人それぞれ。ですが、かなりの日本オタクらしい監督の、怪獣への愛に溢れた、怪獣映画のフルコースな作品なのは、間違いないと思います(笑)。
今年の夏も、すでに折り返し点は過ぎたようです。ギレルモ・デル・トロ監督の「日本に対するラブレター」――『パシフィック・リム』まだの方は、どうぞお早めに。