『星を追う子ども』

ほしのこえ』『秒速5センチメートル』などの、新海誠(しんかい・まこと)監督の最新作。先月、5月7日より、全国ロードショー中。
震災の諸々の影響と、あと、これまでの新海監督作品とはやや毛色が違うらしいということで、今までちょっと行きそびれてたんですが。ようやく見てきました。


(残りの12行、ネタバレあり)
ストーリーとしては、地下世界からやって来た少年と偶然出会った主人公の少女が、少年の面影を追って、地下世界へと旅に出て……、といったようなお話です。
まず、地下世界へ足を踏み入れるきっかけとなる出来事が、けっこう意外性ありました。時代が違うんじゃないかとも思えるような、なんだか場違いな感じもあって。
自分は、地下世界って何?みたいな疑問は持ちつつも、そんな深く考えずに見に行ってて。もっと荒唐無稽なファンタジーかと思ってたけど、えっ、そういうお話なの?!と。
とは言えやはり、地下世界はファンタジーではあるわけで。先が読めない面白さがある一方、一般的に、筋が分かりにくくなりやすい気もするんですが。
主人公の少女と一緒に地下世界へ渡る人物に、もう一人、モリサキという大人の男がいます。
彼は亡き妻との再会を切望し、確信と決意を持って地下世界を旅します。彼の存在が、そうしたファンタジーに、一本、筋を通しているように思いました。
もっと言うと、自分には後半、モリサキが主役に見えました(笑)。もちろん、元々、彼は主要人物の一人なんですけども。
地下世界の少年が、なぜ、誰に会いに来たのかとか、少年とモリサキの台詞が一部、重なったり入れ替わったりすることにも、いろいろ意味があるように思いますが。
別にそういうのが無くても、雄大でいて牧歌的な、どこか懐かしいような地下世界を、自分の足で歩き抜いて。主人公の少女との関係も、いつしか変化して。
長い旅路の果てに、確かに彼は、喪失を受け止めることができたんじゃないかと思います。積極的に、完全にクリアできたわけではないにせよ。
劇場パンフレットの監督インタビューに、「真剣に切実に生きている人間の、どのような気持ちも否定するような描き方にしたくなかった。」とありますが。
それだけの懐の深さのある作品世界であり、物語だったと思います。とても良かったです。素直に感動できる作品でした。