『ノブナガン 1』

『ジャバウォッキー』『エリア51』などで知られる、久正人(ひさ・まさと)先生の、『月刊コミック アース・スター』連載作。
先週、2月10日に発売となった、その第1巻の感想です。


(残りの22行、ネタバレあり)

ロバート・キャパ:「ほう…」「当てられんじゃねェか」「止まってるモンには」

ロバート・キャパ:「だが敵は動くぞ!」「動きを予想しろ!!」「未来の位置にピントを合わせろ!」「被射体の先を狙え!!」

歴史上の偉人の魂を受け継ぐ「E遺伝子ホルダー」たちが、宇宙から飛来し、巨大怪獣にまで進化を遂げた「進化侵略体」の脅威から、地球を守って戦うお話。
この『ノブナガン』第1巻には、『月刊コミック アース・スター』第3号(2011年6月号)〜第10号(2012年1月号)に掲載された、計7話が収録されていますが。
大きなエピソードとしては、だいたい3つに分けらそうな感じです。
まず、まだ普通の日本の女子高生だったヒロインが、修学旅行で来た台湾で、「進化侵略体」の襲撃に巻き込まれ、「E遺伝子ホルダー」として覚醒する、台湾編。
他のE遺伝子ホルダーたちと協力し、辛くも進化侵略体を撃退はしたものの、ヒロインは、進化侵略体の恐ろしさをまざまざと見せつけられます。
しかしそんなヒロインに対し、E遺伝子ホルダーの指導者は、「強要はしない」と断りながらも、この日に備え秘密裡に結成されていた、超国家機関への参加を要請します。

「あそこにいる誰もが 誰かを救おうとして」「それでも自分の力の届かなさに打ちひしがれている」「君は」「その誰かより遠くまで届く力を持っているんだ」

それに続く日本編では、一躍、時の人となったヒロインが、世の中の期待や、力を持つ者の責任といった重圧に、押しつぶされそうになりますが。
大切な友人の、心からの言葉に、自らの決心を固めます。

浅尾かおる:「だから覚えててよ」「たとえ耐えきれなくなって全部投げ出して逃げ出したって」「それでもしおちゃんを全肯定する奴が一人はいるって」「私が命をかけてしおちゃんをかばうよ」

そして第1巻の最後は、フロリダ編。突然の出撃命令で向かったそこには、ハリケーンに乗って空から直接、内陸への侵攻をはかる、新たな「進化侵略体」が。
ただ、標的としては巨大なだけに、撃ち落とすのは比較的容易とも思われましたが、敵がいつでもばらまける状態で卵を抱えていることが分かり、事態は一気に緊迫します。
この暴風の中、進化侵略体の脳にあたる器官をピンポイントで一撃で、卵をまく間も与えずに狙い撃つ――まだまだ半人前なヒロインに、果たしてそんなことが可能なのか。

「やはり作戦を変えた方が…」

「駄目だ」「小椋しお」「君にしかできない事だ」

各地でバラバラに進化していると思われていた敵が、実は地球規模で連携しているらしいことも判明し、進化侵略体との戦いは、そしてさらなる展開へ――。
「E遺伝子ホルダー」や「進化侵略体」といった、久正人先生らしい奇想天外な設定や、ダイナミックな構図、コントラスト強めな絵柄に、まず、目を奪われますが。
「突然自分が別の何かになったって言われて…」「自分が何者かだって分かんなくなって…」と、ヒロインが苦悩したり。
そのヒロインが異性として意識し始める、仲間のE遺伝子ホルダーが、なぜか偉人とは言いがたい、歴史上の人物の力を受け継いでいたり。
そんなアイデンティティをめぐる問題もはらみつつ、非常に熱い、まさに直球正統派バトルアクションといった作品になっていて、続きが本当に楽しみです。