『おおかみこどもの雨と雪』

時をかける少女』『サマーウォーズ』などで知られる、細田守(ほそだ・まもる)監督の最新作。先々週、7月21日ロードショーの劇場作品、さっそく見てきました。
原作:細田守、脚本:奥寺佐渡子・細田守、キャラクターデザイン:貞本義行、作画監督:山下高明、企画・制作:スタジオ地図。


(残りの16行、ネタバレあり)
“おおかみおとこ”と恋に落ち、ふたりの子どもをもうけた女性が、突然の彼の死のあとも、母親としてひとりで立派に、子どもたちを育てるお話。
父親不在で母親ひとりで、子どもたちを育てていくのも、なかなか大変だろうと思いますが。
この物語の場合は、子どもたちが、人間にもおおかみにもなれる“おおかみこども”であるので、さらに輪をかけて子育ては大変です。
もちろんそんな秘密は、他の人に知られるわけにはいきませんし。
また、子どもたちが将来自分で、人間かおおかみかを選べるように、親子は、厳しくも豊かな自然に囲まれた田舎町へ引っ越して、そこで暮らしていくことになります。
父親である“おおかみおとこ”も、生前、その正体を隠してひっそり生きてきて、幸運にもその秘密を打ち明けられるヒロインと出会い、結ばれたわけですが。
そうした何か、自分自身が抱えている人生の問題、誰かに相談したりできないパーソナルな問題を、一生、自分だけの心の内に留めておく人もいるでしょうし。
あるいはそこから、夢とか理想とかに向かって突き進んで行く人もいるでしょうし、そんな衝動に根拠とか理由とかないからと相対化する人もいるでしょうし。
それは人それぞれ、時と場合によりけりですが、まだ何者でもない子どもたちが、そうした選択をしていくさま、そしてそれを見守る母親の姿に、すごく引き込まれました。
この作品の公開前日、7月20日発売の『アニメスタイル001』に、細田守監督のインタビューが載っていて。
「主人公は、あくまでも母親」、(子どもを育てていく)「母親が幸福であるということを、フィクションの中でちゃんと描きたいと思った。」
この映画を作ることで、(「親不孝」だった息子として)「手前勝手な贖罪をしていた感じ」、みたいなことが書かれていて。
また、日本テレビのプロデューサーとして『おおかみこどもの雨と雪』を手がけた高橋望さんのインタビューでは、「少年の旅立ちというモチーフ」に言及があるのですが。
この作品によって、監督が、今は亡き母親への思いに一区切りつけられたのであれば、まさしく「少年が旅立つ物語」だったなと、納得がいきました。
まあ、そんな理屈はともかく、親子で雪山を駆け降りていく爽快なシーンや、カメラの長回し的な演出で子どもたちの成長を描いた面白い場面など、映像的にも見所満載。
そしてなにより、まっすぐな母と子の物語として感動的で、いい歳して映画館でマジ泣きしてしまいました。見に行ってほんとに良かったです。