『アニメミライ2013』

2010年度から始まった、文化庁の委託による、若手アニメーター等人材育成プロジェクト、「アニメミライ」。
公募の末選ばれたアニメ制作会社が、それぞれ約25分の短編オリジナルアニメを作るこの企画。その今年の参加作品が、先々週、3月2日より劇場公開されています。
アニメのミライを担う精鋭アニメ制作会社が作り上げた4作品。さっそく見てきましたので、その感想を。


(残りの26行、ネタバレあり)

  • 株式会社ゴンゾ・『龍 -RYO-』

監督:千明孝一、プロデューサー:石川真一郎、キャラクターデザイン・作画指導:高岡じゅんいち。
幕末・明治維新の日本を舞台に、坂本龍馬の護衛となる少年剣士が、激動の時代を駆け抜けていくお話。
わりとシリアスなストーリーだと思いますが、それほど暗くはないと言うか、キャラクターデザインと相まって、けっこう素朴な印象を受けました。
さまざまなシチュエーションで繰り広げられるチャンバラアクション、殺陣にいろいろと工夫があります。
ひょっとすると、大変な今の時代と当時を重ね合わせて、次の世代へつなぐ想いとか、若手の成長に期待する気持ちなどが込められているのかも。

監督:吉原達矢(「吉」は「口」の上が「土」)、プロデューサー:川崎とも子(「崎」は「可」の上が「立」)、キャラクターデザイン・作画監督:土屋圭。
意識とネットワークをシームレスにリンクさせることが可能になった近未来、世界規模のサイバー災害に巻き込まれたヒロインを救うため、主人公が奔走するお話。
そのヒロインというのが、血のつながらない妹で、ナイスバディで、僕っ娘で、声が喜多村英梨さんで……、と、たいへん欲張りな仕様になっています(笑)。
それと関係あるのかないのか、マンガの描線のような強弱のある輪郭線と、テレビやパソコンの画面のような白くぼやけた映像が印象的。
同名の小説が原作ですが、今回のアニメではまだ、ストーリーの導入部分が終わったところといった感じ。気になる続きもアニメ化されたりするんでしょうか?

監督:立川譲、プロデューサー:角木卓哉、キャラクターデザイン・作画監督:栗田新一。
いつの間にか迷い込んだ不思議なバーで、二人の男がビリヤード対決をするお話。
顔の各パーツ、特に口を大きめにデザインしたキャラクターが、喜怒哀楽のさまざまな表情を見せてくれます。
また、わざと難易度高めに設計してある構図・レイアウトは、若手育成のための教育上の配慮でもあるようです。
「デス・ビリヤード」というタイトルですが、どのあたりが「デス」なのかは見てのお楽しみ。

監督・キャラクターデザイン・作画監督:吉成曜、プロデューサー:堤尚子。
幼い頃に見た魔法ショーのお姉さんにあこがれて、魔法学校に入学した女の子が、思いがけず起こった学校崩壊の危機に立ち向かう!みたいなお話。
ストーリーの組み立て方とか絵の動かし方は日本のアニメ的、ギャグや背景美術などはディズニーとか海外のアニメ風、といった印象の、ハイブリッドな感じのする作品。
ともかく、キャラが表情豊かによく動くし、美術もすごく凝ってるし、アニメーションの気持ち良さにあふれてると言うか、見てて自然と顔がほころんできます。
設定的にも、(信じる心が力になる、みたいな?)テーマ的にも、まだまだお話が作れそうだし、TVシリーズとかOVAとか、さらなる展開を期待してしまいます。


アニメ業界気鋭の4社が本当に作りたかった渾身の作品を一挙公開!ということで、「君に見せたいアニメがあるんだ」というキャッチコピーが付いています。
劇場での公開以外にも、パッケージ販売やテレビ放送やネット配信なども予定されているようです。気になった作品だけでも、いずれかの機会に是非どうぞ。