『ももへの手紙』

先週末、4月21日より、全国ロードショー中の作品。
原案/脚本/監督・沖浦啓之さん、作画監督・安藤雅司さん、美術監督・大野広司さん、制作・プロダクション I.G。
2000年発表の映画『人狼 JIN-ROH』以来、2作目となる沖浦さんの監督作品、さっそく見てきました。


(残りの11行、ネタバレあり)
気がつけば、私、ひとりじゃなかった。
事故で父親を亡くし、母親とともに瀬戸内の小さな島へ移り住んだ、小学6年生の女の子が、豊かな自然とやさしい人々が生きるその島で、不思議な妖怪たちと出会うお話。
まずなんと言ってもやはり、作画が良かったです。影や線が思い切りよく省略されつつ、それでもとびきりリアルに見える手描き作画で、本当に見応えがありました。
背景(美術)も、古い日本家屋や、昔ながらの町並み、そして少し霞がかったような暖かみのある島の風景が、空気感までも表現できてる気がしました。
そうした作画と美術が相まって、このまま何も事件が起こらなくても、何時間でも飽きずに見ていられそうな感じ。
とは言えもちろん、ちゃんとストーリーはありまして(笑)、タイトルにもあるように、父親が遺した、「ももへ」とだけ書かれた手紙が、物語の起点になります。
最初はぼんやりとした陽炎のような姿をしていた妖怪たちは、気配や声など、次第にはっきりとした形を取って、主人公の前に現れるようになりますが。
そんな妖怪がふと、父親そっくりの仕草・笑い方を見せたり。主人公の行動が結局、実を結んだのかどうか、(たしか)明確には描かれていなかったり。
それが、児童文学的な素朴な死生観のファンタジーか、あるいは、多感な時期の少女が(特に母親との)すれ違いで見せた心の揺らぎかは、見た人のお好み次第かな、と。
とりあえず、もしもの時に備えて自分も、意味深な書き出しの便箋を、机の引き出しに入れとくべきかと思いました(笑)。
ともかく、リアル寄りでここまでハイクオリティな手描きアニメを、(たまたまですが)スクリーン間近の大迫力で堪能できて良かったです。