『簡単なアンケートです』

TVアニメ化もされた『とある魔術の禁書目録』や『ヘヴィーオブジェクト』シリーズなどで知られる、鎌池和馬(かまち・かずま)先生の、先々月、7月発行の作品。
鎌池先生と言えば、その速筆ぶりでも知られていますが、今月、9月10日には、新作『ヴァルトラウテさんの婚活事情』が発売されましたし。
来月、10月10日には、『新約 とある魔術の禁書目録』第5巻が、再来月、11月10日には、『インテリビレッジの座敷童』第2巻が、それぞれ発売予定となっています。
また、アスキー・メディアワークス創立20周年記念作品として、劇場版『とある魔術の禁書目録』の、来年、2013年2月23日全国ロードショーも発表されています。
さてそれでは話を戻して、本作『簡単なアンケートです』の感想です。


(残りの13行、ネタバレあり)

「映画を観る時にさ、『これは絶対つまんない。つまんないトコを探そう』って心を決めて観始めたら話にならないだろう?」

「本来なら黒い矢印の先にラブコメはあるかもしれない。でも私達の意識がそれを拾い上げる事を拒む。だから黒い矢印の先にはホラーしかないと考えてしまう。どうかな?」

何本かのショートフィルムを見せられて、それらを面白い順に並べるお話。と同時に、「読者参加型のアンケート」と称して、読者にも同じ作業への参加を促します。
それぞれの「ショートフィルム」には実際に内容があって、と言うか読者的には、ショートショート(掌編小説)を計24本、ざっと読んでいく格好になりますが。
それだけでは終わらなくて、その後にとあるギミックが用意されています。
あとがきに、「思いついちゃったもののシリーズの中に組み込めないネタ」「が一定数溜まってしまったのでこんな本を書いてみました。」とあるのですが。
小説に限らず、漫画でも映画でも演劇でも、そうした『物語』に必要なものって何でしょうか?
ストーリー? キャラクター? オチ? メッセージ? でも、せっかく料理を作っても美味しいと言ってくれる人がいないのでは虚しいように。
――いやそもそも、“誰もいない森のなかで倒れる樹”は、はたして音を立てるのでしょうか?

『私の見ているものが真実だとすれば、「Ab.バスター」とも呼ぶべき人材が必要だ。あれに対抗しようにも、あれを集め過ぎた私では不適合だ。だからこそ新規の人材に「Ab.バスター」としての……』

鎌池先生の作品で「Ab.バスター」的なキャラクターと言うと、すべての異能の力を打ち消す『幻想殺し』を右手に宿す、あの“不幸”少年を思い浮かべますが(笑)。
結局、このアンケートにはどんな意味があるのか?
電撃文庫きっての売れっ子作家が、単なる短編集ではなく、わざわざこうした形で読者に投げかけたのは、ひょっとするとそうした根源的な問いだったのかもしれません。