『Happy Death Day』

第3回GA文庫大賞・優秀賞受賞作。今年、2011年9月発行。
作者の望公太(のぞみ・こうた)先生は、今年8月発売の第5回ノベルジャパン大賞・金賞受賞作『僕はやっぱり気づかない』で、すでにデビューされてますが。
あとがきによれば、この『Happy Death Day』が、実は処女作だったりするそうです。
先週、12月1日に、『僕はやっぱり気づかない』第3巻発売、来週、12月15日に、『Happy Death Day』第2巻発売ということで、以下、『Happy Death Day』第1巻の感想を。


(残りの17行、ネタバレあり)

紫藤:「……なにが目的なんだよ、お前?」

ヨミジ:「実は私は小説家で、目的はあなたの書く遺書。それを参考にすることで、私はリアリティ溢れる小説が書ける……」

ヨミジ:「なーんて、安っぽいオチはいかがです?」

この世界が大好き、自分自身も大好き。自分の人生はもう完成している。だから、死のう。――そんな変わった理由で自殺しようとする、大学生が主人公。
彼は酒に酔った勢いもあって、ネットで見つけた『自殺屋』なる業者に仕事を依頼するのですが。料金は十万円、ただし必ず遺書を書くことが条件で……、といったお話。
こういう題材ですが、主人公の一人称視点で進む文章は軽快で面白いですし、ページ数もわりと少なめなので、さくっと読めます。
ただ、もし実際に、あなた自身が自殺を考えている場合には、「こころの健康相談統一ダイヤル」(内閣府)をはじめ、現在、さまざまな相談窓口があります。
「みんなのメンタルヘルス総合サイト」(厚生労働省)など、悩み別の相談窓口情報は、内閣府・共生社会政策・自殺対策のページを、ぜひ一度、ご覧ください。
さて、いろいろと準備もあって、自殺は一週間後と決まったものの、生きていれば腹も減るし、犬も歩けば棒に当たるというわけで。
殺人鬼の少女とお知り合いになったり、親友と語り合ったり、思わぬ事件に巻き込まれたりして、主人公の一週間は過ぎていきます。
変わった名前の意味を聞かれ、「小説、みたいなものですよ」「作者がなにを書きたいかよりも、読者がどう捉えるかの方が重要」と答える、自殺屋の男。
「この世界は一つの小説みたいなもの」「未来予知っていうのは、小説の数ページ先を読むこと」「そんなことをしたって小説の内容は変わらない」と言う、超能力者。

紫藤:「とにかく、『自分』で生きていくしかないんだよ。よく、人間は変われる、なんて漫画で出てくるけど、ありゃフィクションだ」

紫藤:「なりたい『自分』になることはできるかもしんないけど、どんな『自分』になりたいかを決めるのが、そもそも『自分』なんだから、その考えは矛盾するよ」

そんなこんなで、主人公は、遺書として、一本の小説を書き上げますが――。
終わり方が終わり方なので、どう続くのかは分かりませんが、上記のように第2巻が出ますし、この第1巻の巻末にも「ネクストプロローグ」なるものが載っていて。
第1巻の主人公たちが再登場するかどうかも含めて、続きが気になります。