『BEATLESS』 #1〜4

小説家・長谷敏司先生、イラストレーター・redjuice先生、そしてフィギュアメーカー・GOOD SMILE COMPANYがコラボレーションしたプロジェクトの作品。
月刊ニュータイプ 2011年7月号』から連載の始まった、小説『BEATLESS』の、以下、感想です。


(残りの26行、ネタバレあり)

遠藤ユカ:「お兄ちゃんはめんどくさいこと考えすぎだよ。相手が誰かより、わたしに何をしてくれるかが一番大事なんだよ」
遠藤アラト:「おまえうらやましい性格だな」

主人公は高校生。ある夜の帰り道、空から花のようなものがぱらぱらと降ってくる光景に出くわし、さらにはその花に乗っ取られた自動車に危うく轢かれそうになるが。
唐突に現れた、「レイシア」と名乗る少女型アンドロイドに、その場を助けてもらう。
ほとんど事情も分からぬまま、「わたしの所有者(オーナー)になってください」と言う彼女の申し出を受け入れてしまった主人公は。
それをきっかけにして、人類社会を揺るがす大事件に巻き込まれてゆくのだった……。
「humanoid Interface Elements」略して単に「hIE(インタフェース)」と呼ばれる人型アンドロイドの普及した、22世紀の東京を舞台に、ヒトとモノとが紡ぐ物語――。
第1話を読むと、主人公の友人たちが、見た目も振る舞いも人間と変わらないhIEに対して、完全にモノ扱いと言うか、すごく冷淡で。ちょっと違和感あったんですが。
でも、第2話まで読むと、そんな単純な話ではなく。産業革命以来とも言えるような、古くて新しい問題、人手と機械化・自動化との対立構図もあったのか、と。
第2話では特に、レイシアがファッションモデルの仕事を見事にやり遂げ、鮮やかに「アナログハック」を成功させているので、なおさら説得力がありました。
心臓もなく、だから胸の鼓動もなく、「わたしには、魂はありません」と告げる、アンドロイドのヒロインに。
「魂がないからって響かないわけじゃない」「それでも、こころは動くんだ」と返す、主人公。
ネット上の、人間らしい“振る舞い”データを参照して、わたしってこんなに“軽い”女なんですよとばかりに、一瞬で表情・仕草を変えてみせる“ツンデレ”ヒロインと。
そうした安易な“人間扱い”・素朴な擬人化幻想を、ぽきぽきとへし折られながら、それでもやっぱり彼女を意識してしまう、チョロい主人公(笑)。
しかしそんな、レイシアのいる新しい日常も、そう長くは続きません。
第3話、第4話では、レイシア同様、一般の水準を遙かに超える、超高性能な謎のhIEが次々と(本格的に)登場し。
また一方で、社会に浸透し、人間の居場所を奪うかのようなhIEを、敵視し、排除しようとする、「《抗体ネットワーク》」なる組織も表立った行動を開始します。
レイシアが人間ではなくても、モノ・道具だとは割り切れない主人公に対して。
オーナーとしての責任・自覚を迫り、オーナーの意志を代行する・オーナーの意志の実現を自動化する、道具としてのあり方を語る、hIEたち。

レイシア:「わたしを“使い”ますか?」

主人公、そして友人たちも、それぞれがそれぞれの立場で、当事者としてこの事態に関わっていくなかで。
超高度技術の結晶・「《人類未到産物(レッドボックス)》」の少女たちは、世界に、そして、ヒトとモノの関係に、いったい何をもたらすのか――。
小説『BEATLESS』は、先週、9月10日発売の『月刊ニュータイプ 2011年10月号』で第4話まで連載中。『BEATLESS』公式サイトでも第3話まで(今のところ)全話公開中です。
そしてこの小説を皮切りに、フィギュアの発売もすでに発表されていて、また先週、9月9日発売の『4コマなのエース vol.5』からは、漫画『びーとれすっ』も連載開始。
redjuice先生のキャラクターデザインだけでなく、長谷敏司先生のストーリーも、かなりビジュアルイメージを意識して練り上げられている感じなので。
やっぱり映像でも見てみたいです。期待してます。