『NOVA 2』

SFを中心に書き下ろしの新作短編を集めたオリジナル・アンソロジー、『NOVA』の第2巻。今年の7月発行。
編集後記に「ちなみに第三巻は、二〇一〇年十二月の刊行予定で進行中。」とある通り、シリーズ第3弾、『NOVA 3』が、昨日、12月7日に発売になっています。
「今回は直球の本格SFで勝負。」ということで、『NOVA 3』の執筆陣には、瀬名秀明先生、谷甲州先生、森岡浩之先生などのお名前が。
他に、『NOVA 1』以来、2度目の登場となる円城塔先生が、第32回野間文芸新人賞受賞第1作を。
そして、『NOVA 2』から2号連続での登場となる東浩紀先生は、『NOVA 2』掲載の『クリュセの魚』の続編(?)を、それぞれ寄稿されてます。
そう言えば、東浩紀先生がストーリー原案担当のテレビアニメシリーズ、『フラクタル』、いよいよ来月、2011年1月から放送スタートです。
さてそれでは話を戻して、シリーズ第2弾、『NOVA 2』の感想です。


(残りの20行、ネタバレあり)

敵対する宇宙人の統治下にある惑星に、工作員として送りこまれた主人公たちは、任務の半ばで捕らえられ、バーチャルな空間内部に閉じこめられるが……、といったお話。
「鏡像人格」とか「精神波動走査」とか「精神旋光の回転角」とか「意識の対掌体」とか「疑似EPR相関」とか……。
うわーっと頭を抱えながら読み進めると、なんとホメロスの叙事詩『オデュッセイア』にたどり着くという、驚きの展開。
でも、そんなところは適当に読み流して、最後にプスッとやるのも、一つの楽しみ方かと。お読みいただければ分かります(笑)。

見世物小屋の興行で生計を立てる一家が、怪物“くだん”が生まれたという噂を聞きつけて、それを買い取るためにはるばる出向くが……、といったお話。
“くだん”とは、牛だが人の顔をしていて、生まれつきよく喋り、昔のことであれ未来のことであれ、本当のことしか言わない、などと伝えられる妖怪のことです。
この作品は、障がいや偏見といったセンシティブな事柄を扱っているのですが、物語の主な舞台が戦時下の日本ということで。
現在の社会規範から考えると、性行為も含め、目が飛び出るようなシーンもあったりして。
そうして“物の見方”が揺らいだところにドスンと、実在しない、でもどこか見覚えのある不気味な存在を持ってくる。そんな構成が、ホラー的にもテーマ的にも見事です。
胸にざわざわとしたざわめきを残しつつ、不思議な情感にも満ちた作品でした。
そう言えば、津原先生の『バレエ・メカニック』、かなり評判良さそうなんで購入したんですが、買っただけで安心して、読むのをすっかり忘れてました(笑)。
最近、文庫サイズの本ばかり読んでるので、単行本の存在が頭からすっぽり抜け落ちてたようです。読まなければ。

――僕は死んで生まれ変わる。人間を超える存在になって、またこの世に戻ってくる。そして母や柏崎みたいな悪い人間を退治するんです。

大手調査会社を辞めて、個人営業の調査事務所を構える主人公は、とある少年にかかわる、奇妙な調査を依頼されるが……、といったお話。
さすが宮部先生と言うか、その語りにぐいぐい引き込まれます。そして、どこかおかしい、なんか騙されてると思っていたら、そこだったのか!みたいな。
収録作の中では、ダントツに長編ですが、そんな長さを感じさせない、とても読みやすい作品でした。


上記以外の作品も、そして大森望先生の解説も面白かったです。