『イマジン秘蹟 1』『同 2』『同 3』

タイトルにある「秘蹟」は「サクラメント」と読みます。
喪男の哲学史』や『電波男』など、評論活動でも知られる、小説家、評論家、本田透(ほんだ・とおる)先生の作品。2007年10月開始で、現在、第3巻まで刊行中。
本田透先生と言えば、『円卓生徒会』シリーズや、『明日葉-Files』シリーズ(月刊『ムー』編集部・協力)など、多くの著作が刊行されているわけですが。
そんな中の一つ、『ライトノベルの楽しい書き方』が、今度、実写映画化され、今週末、12月4日から全国で順次公開されます。
出演は、Berryz工房須藤茉麻さん、『けいおん!中野梓にゃん役でおなじみの竹達彩奈さんなど。
原作小説『ライトノベルの楽しい書き方』の方も、シリーズ最新第7巻が、先月、11月15日に発売されています。
さて話を戻して、本作『イマジン秘蹟』についてですが、最新第3巻が2008年5月に発行されてから現在まで、残念ながら長らく刊行がストップしています。
ただ、『円卓生徒会』完結時(2009年11月頃?)のインタビューでは、「『イマジン』も止まってましたが、来年にはいろいろとリニューアルして再開します。」とのこと。
それでは以下、『イマジン秘蹟』第3巻までの感想です。


(残りの10行、ネタバレあり)

尾津玲於奈:「あら? “世界”は“主観”から立ち現れてくる現象なんだよ、ちひろくん。ふふふっ。」

「半径三メートル」の「個人の世界」の内側で、それ以外の「外の世界」をやり過ごし、平凡かつ退屈なパーソナルライフを送る主人公が。
高校入学初日に、とある事件に巻き込まれ、学園の「魔女」を祓う「今久留主高校異端審問部」略して「イマジン」に、なぜだか入部させられて……、といったお話。
「魔女」とは、認めがたい現実を変えたいという願望が、既存の「物語」のキャラクターに変身もしくは同一化するという形で発現し、異能力を獲得した者たちのことです。
主人公は、「イマジン」での活動を通して、「魔女」や、「物語消費者」「物語破壊者」「物語渇望者」「物語解体者」といった役回りの人物たちと関わり合っていきます。
そうした設定、枠組みと、冒頭で引用したような、哲学的な蘊蓄あるいは屁理屈が、特に面白いと思いました。
そんな中で見え隠れする、主人公自身の過去と、主人公の姉の正体。「傍観者」として空回りし続ける主人公は、はたして自分の「物語」を手にすることが出来るのか――。
「いろいろとリニューアルして再開します。」というスーパーダッシュ文庫ホームページインタビューでの言及が、具体的にどんな形を想定したものなのか分かりませんが。
本書『イマジン秘蹟』第1巻のあとがきを読む限り、かなり作者の思いの詰まった作品であるような印象ですし。
主人公や姉の秘密に絡めて、もうひとひねりありそうですが、実際どうなのか。作者がこの作品に込めようとしたメッセージを、ぜひ最後まで聞かせてほしいです。