『金の瞳と鉄の剣』 #1

同じく、先日プレオープンした星海社のウェブサイト・『最前線』掲載作品。
吸血殲鬼ヴェドゴニア』や『アイゼンフリューゲル』などで知られる、虚淵玄(うろぶち・げん)先生の作品です。


(残りの15行、ネタバレあり)

キア:「……我はヒトの似姿に生まれ落ちた、ヒトならざる者。望まれずして生を受け、何処より来たるか知れず、やがて何処に至るやも知れず……」

傭兵のタウと魔法使いのキア。相棒として冒険の旅を続ける二人が、偶然、龍の足跡を発見し、名声を得るため、そして新たなチャンスを摑むため、龍退治を思い立つ……。
あらすじ紹介によれば、「竜と剣、そして目くるめく魔法の世界。」ということで、まさに王道ファンタジー。
ですが、無造作に龍や魔法を持ち出してくるのではなく、できるだけ現実と地続きで導入しているのが良かったです。
何がリアルかと言うと、龍退治をするのにも、まずはお金のやりくりから、というところ(笑)。戦い方を検討し、装備を調えて。
いざ舞台となる高山を登れば、標高が上がるにつれて、景色も徐々に変わっていって。
見渡す限り岩と氷しか目に入らない、一切の生命の気配が途絶えた場所で、ついに龍と遭遇。
「トカゲの変異種」とは訳が違う、龍の攻撃に驚くタウも、そうしたリアルな導入に一役買っています。
一方の“魔法”についても、「体系に則った技術」である“魔術”と対比させることによって、そこから逸脱させるという手順を踏んで、描いています。
そしてまた、そうした“詐称”は、キアが自らの異能を人の世に馴染ませる唯一の処方、でもあります。

キア:「ねぇ、タウ。僕は――いったい何者なんだろう?」

タウ:「決まってる。俺の相棒さ」

コンビを組むことで互いに影響を与えあい、成長していくタウとキア。そんな二人の行く手に待ち受けているものは――。
高河ゆん先生のイラストも加わって、ますますパワーアップした「最新&最高の“バディもの”」。
次回掲載は、10月15日(金)。『最前線』のスケジュールページによれば、少なくとも当面は、月イチペースでの更新のようで、続きがとても楽しみです。