『デュカタンの娘』

先週、8月19日発売の、『ジャンプSQ.』季刊増刊・『ジャンプSQ.19 2010年09月号(夏号)』掲載作品。
『ジャバウォッキー』の久正人先生・原作、『紅 kure-nai』の山本ヤマト先生・漫画。
5月に『ジャンプSQ.19』創刊号が出たときに、次号にこの読み切りが載るって知ってから、ずっと楽しみにしてて。それをようやく読めました。


(残りの19行、ネタバレあり)

ハル:何億光年広がってもこの宇宙のどこにも同族のいない 私は孤独で奇妙で中途半端な存在だった

かつて侵略者として地球を訪れ、今は素性を隠して慎ましく暮らす宇宙人を父親に持つ、女子高生が主人公のお話。
宇宙人と地球人のハーフという、人には言えない秘密を抱え、常に孤独を感じている彼女が、偶然、同じ境遇の青年と出会い、恋をして――。
切ない系のロマンティックSFとして、とても良い作品でしたが、今回のお話単体で、結構きれいに終わっているので。
最初読んだときは、ほんとに“読み切り”で、連載とか関係ないのか……、とか思ってしまったんですが。
よく考えてみると、恋人って、死んでしまったわけではないのかも。実際、地球人の方は生きてましたし。
あの銃は地球人には効かなくて、地球人と深く融合している部分は生き残ってる、みたいな。
で、今後、欠落した記憶を埋めていく、恋人たちのラブストーリー的展開に。
そしてそれは同時に、二人にとっては、また別の面での精神的成長過程でもあったりとか。
(そもそも、異星人とか異能力とかはメタファーなんだという読み方も、もちろんありだと思います。)
あと、怪獣襲来のニュースとかから判断すると、そう頻繁にではないでしょうけど、日常的に、地球外生命体の侵略にさらされている世界が舞台のようで。
元侵略者の父とその娘による、地球防衛・家族ものとしても、話を広げていけそうですし。
今回実際そうでしたけど、制約条件付き(←これが重要)テレポート能力を鍵とした、アクション・バトルものとしても面白そう。
一話完結の読み切りとしても良く出来たお話でしたけど、そんな感じで、それ以上に、奥行きのある作りだったように思います。
それから、作画面に関しては、山本ヤマト先生の緻密で繊細な描線と陰影が非常に良かったですが。
お父さんのキャラクター造形とか、青年の語る経緯説明のページの描き方とかが、どことなく久正人先生っぽい気がしました。
もちろん実際どうなのかは、部外者なので分かりませんし、最終的には完全に、山本ヤマト先生の漫画になってましたけど。
久正人先生のファンとしては、そういうところもちょっとうれしかったりして。
本作『デュカタンの娘』掲載の『ジャンプSQ.19 2010年09月号(夏号)』、紙雑誌版は現在好評発売中。iPadで読めるデジタル版は、明日、8月26日に配信開始予定です。