『月見月理解の探偵殺人 2』

明月千里(あかつき・せんり)先生の、GA文庫大賞・奨励賞受賞作シリーズ。
以前、第1巻の感想で、一回限りっぽい設定が多いのでシリーズ化はちょっと難しいかも、みたいなことを書きましたが。
この第2巻はちゃんと続編になってましたし、第1巻同様、内容も面白かったです。そしてこの先も続けていけるように、今後の布石まで打ってあります。


(残りの16行、ネタバレあり)

月見月理解:「世の中に完全な偶然なんてものはひとつもない。完全なる必然がこの世にないようにな」

まず、続編ということで、かなり律儀に第1巻の設定を引き継いで、設定の理屈付けをしているのが印象的でした。
逆に、今回もやや曖昧なままにされている事柄は、今後の展開に関係してくる部分なのかな、とか思ったり。
あらすじとしては、さまざまな悪事を重ねてきた産業スパイ・星霧花鶏を追って。その妹・星霧交喙やその他の関係者と。
そしてもちろん、このシリーズの主人公・都築初やヒロイン・月見月理解たちが。廃屋の地下室に閉じこめられ、命がけの監禁脱出ゲームをする羽目になる、というお話。
この「監禁脱出ゲーム」というのは、文字通り“ゲーム”になってて、いろいろとルールがあるんですが。これが複雑でややこしい(笑)。
だけど実はこのルール、冷静に考えると冷静ではいられない、みたいなところもあって。よく分からん!っていう読者の反応は、むしろ作者の狙い通りかも知れません。
登場人物の一人がまさに「意味がさっぱりわからねーぞ」と言ってるんですが(笑)。ストーリーが進むに従って、各ルールの意味も自然と明らかになっていきます。
もっとも、こまかい条件がいろいろと多いのは、あとがきの記述から推測(憶測)するに、後付けでいろいろと論理の穴を埋めてった面もあるのかも、ですが。
で、そんな感じで当然ながら今回も、トリックは見抜けず、完全にだまされました(笑)。
今回のトリックは、フィクションならではですけど、すごく面白いなと思いました。しかも、このシリーズの根幹(?)である「探偵殺人ゲーム」とからめてありますし。
考えてみれば、今回の新キャラ・星霧交喙も、行動特性的に見て、主人公・都築初とヒロイン・月見月理解の、ちょうど中間あたりに位置する感じのキャラですし。
そういうところで、設定を・お話を、第1巻の状況からうまく膨らませてるな、という印象を受けました。
作者の明月先生は、あとがきで毎回触れている以上に、真実とは何か、みたいなことについて、相当深く考えて、それを作品に反映されてるような気がします。
今回、サブヒロインとも言うべき新キャラ・交喙をめぐるお話だったこともあって。主人公・初とヒロイン・理解の掛け合いは少な目でしたが。
どうやらシリーズとしてさらに続いていきそうな感じなので、そういうのは次巻以降でまだまだ楽しめそうです。今後も期待してます。