『虹色ほたる〜永遠の夏休み〜』

テレビシリーズの映画化ではない、オリジナルな長編アニメとしては約30年ぶりとなる、東映アニメーション製作の劇場作品。
先週末、5月19日より全国ロードショーの本作、さっそく見てきました。
主なスタッフは、監督・宇田鋼之介さん、原作・川口雅幸先生、脚本・国井桂さん、キャラクターデザイン・作画監督・森久司さん、美術監督・田村せいきさん、など。


(残りの15行、ネタバレあり)
父親を交通事故で亡くした少年が、父との思い出の場所である山奥のダムで不思議な老人と出会い、30年以上前にダムに沈んだ村へタイムスリップするお話。
原作は、自分はなんとなく、昔からある定番的な児童書かと思ってたんですが。実はけっこう最近の作品で、著者が自身のホームページで連載していた小説らしく。
2007年から出版されている書籍は、今では累計40万部突破のロングセラーなのだとか。出版元は、ライトノベル界隈でも最近わりとよくその名を目にする、アルファポリス
さて、映画の方はまず、CGを一切使用していないという、独特の手描き作画が非常に印象的でした。
ラフな輪郭線と“色トレス”の手法を組み合わせた柔らかい雰囲気の人物と、表情豊かな夏山の自然を空気感まで伝えるような背景が、作品の内容と絶妙にマッチしてます。
さらに、これももちろん一匹一匹手描きらしい、たくさんの蛍が飛び交うシーンも、ちょっと言葉では言い表せないくらい、きれいで心に残ります。
ストーリーの方は、主人公は最初当然、戸惑いながらも、現代へ戻るまでの1ヶ月、豊かな自然に囲まれた昭和52年の田舎の村で、楽しい夏休みを過ごすことになりますが。
主人公がお世話になるお婆ちゃんの家で、一緒に暮らすヒロインの少女が実は、思いもよらない秘密を抱えていて――。
原作はもちろん映画の制作も、何年も前から進められていたことで、全く予想外だったようですが。
かけがえのない大切な人、故郷を失うこの作品には、昨年の東日本大震災と重なる部分もあるように思います。
(ちなみに原作者の川口雅幸先生も、岩手県大船渡市で被災されたそうで、毎日jp(毎日新聞)で紹介されている震災当日のエピソードが何気にすごいです。)
劇場パンフレットに載っている「〜原作者より〜」と題した文章に、「過去は無くなるけど、未来に繋がる。」という一節があるのですが。
村で過ごした記憶は失って、現代へと戻ってきた主人公が、成長して再び訪れたダムで出会う奇跡には、そんな作者のメッセージが込められているような気がします。
(成虫になってからは)非常に短命な蛍と、ダムに沈む村を通して、「今を生きる」というテーマと、前を向いて進むことを描いた作品。
考えてみれば自分は、テレビシリーズの劇場版を含めても、東映アニメを映画館で見るのは久しぶりでしたが、わざわざ見に行って良かったです。