『ベッドタイム・ストーリー』

星海社のウェブサイト『最前線』のスペシャル企画、『坂本真綾の満月朗読館』で、先月、11月22日の回にUSTREAM配信された、乙一先生の書き下し新作。
ちなみに、本日、12月21日19時からは、『坂本真綾の満月朗読館』最終夜として、奈須きのこ先生の新作『月の珊瑚』が配信されます。
今回は、東京・六本木のメイン会場での朗読ライブを、全国9ヶ所のサブ会場へと衛星生中継し、USTREAM配信もこれまで通り行うという、スケールの大きなイベントに。
『月の珊瑚』朗読バージョンを完全収録予定のビジュアルブックレットほか、全国の会場のみで手に入る『坂本真綾の満月朗読館』限定グッズの販売もあるようです。
詳しくは、星海社のウェブサイト『最前線』、『坂本真綾の満月朗読館』のページでどうぞ。
それでは、以下、『ベッドタイム・ストーリー』の感想です。


(残りの12行、ネタバレあり)

椎名アカリ:先輩、聞いてください。
私には超能力があるのです。

ある【土曜日】に知り合って、主人公とつきあうようになった彼女の趣味は、物語をつくって小説にすること。それと、占星術。
その彼女が、ここ最近、主人公が眠れないとき、枕元でベッドタイム・ストーリーを聞かせてくれるのですが、今日のお話は、いつもと印象がちがっていて……。
ちかければちかいほど、無力で、遠ければ遠いほど、うごかす力は強くなる。彼女の「超能力」というのは、物語そのもの、創作物そのものを指しているようにも思えます。
そして、十分遠く離れた場所ならば、過去や未来の状態が同時に俯瞰で見えるし、そこでは宇宙を自由にクリエイトできる、というようなことも。
でも、そんなおどろくべき彼女の能力には、実は、例外ルールと、制限時間があって。彼女の想いは、彼女の祈りは、無事、主人公の心にまで届くのか――。

椎名アカリ:「先輩の心を、つくりかえてしまった……。先輩のなかにある、私への想いは、はたして、ほんとうのものでしょうか……。そうおもうと、たまらなく、怖いんです……」

僕:ほんとうは星の配置に意味なんてなかった、と言うつもりはない。たしかに意味はあったんだろう。でも、それは、見上げる人々の胸に、生じるものだったんだ。

彼女と同じく、そしてまた別の意味で、主人公も“物語の力”を持っているように思います。
全体としては優しく切なく、でも所々にとぼけたユーモアもまじえた、実に乙一先生らしい、面白い作品でした。
なお、『ベッドタイム・ストーリー』の全文は、本日、12月21日、『坂本真綾の満月朗読館』最終夜までの期間限定で、星海社のウェブサイト『最前線』にて公開中です。