『天使から百年』

『マルタ・サギーは探偵ですか?』シリーズなどで知られる、野梨原花南(のりはら・かなん)先生の作品。
今年5月にこの第1巻が出たばかりですが、先週、9月18日に、早くも第2巻が発売されています。
ほとんど“ジャケ買い”ならぬ“表紙買い”をしたまま、未だに読んでいなかった第1巻を、そんなわけで急いで読んでみました。


(残りの14行、ネタバレあり)

雪村誠:夜風が吹く。
春が進めば、桜は容易く、雪崩れるように散るのだ。
その時まで、いつでも人はそれを忘れ去っている。

ストーリーとしては、欧米風の文明を持つらしい異世界で、「ロドーリー」と呼ばれる異形の敵に対抗するため設立された学院を主な舞台に。
主人公の少女が、別の世界から召還した魔人と契約し、ともに戦っていく、というお話。
ですが、もっと端的に言えば、カバー裏表紙の内容紹介にあるとおり、まさに、「これは、世界に立ち向かう方法が見つからない、少女たちの物語。」なんだろうな、と。
最初読んでて、理由付け(なぜそうなるのか)とか、段取り(どうしてそうなるのか)とか、ちょっといろいろ省略し過ぎかなとも思ったんですが。
でも、読んでるうちにそんなことはどうでもよくなって、なんか涙まで出てくるくらい、物語に引き込まれてました。
このスピードでなければ追いつけない思い、届かないメッセージというのは、確かにあると思います。
“ここではないどこか”に行きたいといつも思っていた、主人公の少女と。“誰かに必要とされること”を切実に求めていた、魔人として召還された現代日本の少女と。
どうやら自我の構築に問題を抱えているらしい、敵である生物兵器「天使」と。なにやら現在の事態に深く関わっているらしい、明治期日本の青年と――。
巻末あとがきに「今回はあらかじめご依頼をいただいて、三巻セットです。」とあるのですが。
もし仮に(これを素直に受け取って)このシリーズが全3巻予定だとすると。当然すでに明確に着地点も見えているだろうし、伏線も張り巡らされているだろうし。
続きがすごく楽しみです。