『戦う司書と絶望の魔王』

前作『戦う司書と終章の獣』から約1年3ヶ月ぶりとなる、「戦う司書シリーズ」待望の最新作。
いつものように、というか、いつもよりもさらに良かった・面白かったです。
ページ数も増量、内容も盛りだくさんで、物語に引き込まれすぎて、ちょっとまだ頭がぼーっとしています。


(残りの15行、ネタバレあり)

ルルタ=クーザンクーナ:「諦めるなら、それら全てが無意味になる」

前作までのシリーズの流れや、今作のタイトルからも想像がつくように、そしてまたカバー裏表紙の内容紹介にもあるように、今回は「魔王」が「絶望」するお話です。
なので、単体として見れば“バッドエンド”。さらに付け加えるなら、「暗殺兵器」とか、最後の方はある意味“ホラー”(笑)です。
でも、出会うはずのない二人が、しかしそれ故に出会い、愛し合う。そういう筋書きを、こんなにも情感豊かに形にされて。
しかもそれが、シリーズ全体のストーリーや、おそらくテーマにまで密接にリンクしているともなると、自分としてはもう、ただ感動せざるをえない感じです。
あと、何気にシリーズ中で一番好きなキャラ、ウインケニーが再登場したのもうれしかったです。この作品でしかあり得ないような、かなり特殊な形で、ですが。
で、ちゃんと活躍もしてくれるんですが、その前に、「やることもないので」砂に埋まってたりして。
なんかシュールすぎて吹き出してしまいました。ウインケニーって、いつからこんな“萌えキャラ”になったんだ(笑)。
いや、ほんとは見た目冴えない、陰気なスキンヘッド(?)の兄ちゃんなんですけど。(そんな彼の生きざまは、3作目の『戦う司書と黒蟻の迷宮』で読めます。)
ふと思ったんですが、このシリーズの読者の男女比率ってどんな感じなんでしょうか。どっちかというと、内容的には、女性に好まれそうな要素が多い印象があるのですが。
主人公(?)は女性だし、ライトノベルにしては男性キャラが多い気がするし、3作目とか、見方によってはほとんど“BL”だし(ほんとに“BL”ではないですけども!)。
さて、巻末のあとがきによれば、「長く続いてきたこの作品も、いよいよ次で最終巻」とのこと。
大好きなシリーズが完結してしまうのは本当に寂しいのですが、その一方で、この物語にどういう風に決着がつくのか、すごく興味もあり。
「人間の『本』を食う能力者」だとか「仮想臓腑の中心にある劇場」だとか、気になるフレーズがこれまでいくつも出てきましたが。
この“フィクション”に、どうか幸福な結末を。