『戦う司書と恋する爆弾』

シリーズ最新巻(『戦う司書と絶望の魔王』)発表やアニメ化(?)情報に刺激を受けて、おさらいもかねて、シリーズ1作目を読み返してみました。
思えばこの作品、最初の方がすごく暗くて、初めて読んだときは何度も読むのを挫折しそうになりました。
それを何とか持ちこたえて読み進めて、こんなにもはまってしまっているわけですから、分からないもんです。


(残りの12行、ネタバレあり)

ハミュッツ=メセタ:「ないのにねえ、天国なんて」

すでに8作目の『戦う司書と終章の獣』まで読んでいる身からすると、このセリフはなかなかに深いものがあります。
さて、スーパーダッシュ文庫ホームページの作者インタビューによれば、このシリーズ全体の主人公は、世界最強の「武装司書」である、ハミュッツです。
ですが、シリーズのそれぞれの作品の主人公はむしろ彼女ではなく、第1巻である本作品の場合もそれは、“恋する爆弾”コリオ=トニスくんだと思います。
で、その彼が暗い! というか、悲惨なのです。
言ってみれば、最低限人間的な生活を、マイナス方向に軽くぶっちぎっちゃってる、みたいな。
なので、冒頭でも触れたように、何度も読むのを挫折しかけました。正直、これ買ったの、失敗だったかなぁとも。
でも、せっかく買ったのに途中で放り出すのもなぁと読み進めて、今ではすっかり、シリーズのファンだったりするのです。
それはともかく、物語としては、カバー裏表紙の内容紹介にもあるとおり、「死者の全てが『本』になり、図書館に収められる世界」という独特の設定にまず驚かされます。
そして、「神溺教団」なる謎の組織とその教義(「人間」についての考え方)が、設定的に秀逸です。もちろん、人道的には最低・最悪ですが。
そうした設定の上で、まさに“運命的な”コリオたちのプラトニック・ラブと、ハミュッツたちの戦いとが、クライマックスに向けて見事に収束していくのです。
あらためて、本当に面白い作品、シリーズだと思います。